総合レビュー
本の内容・あらすじ
手に掬い取れるものが、星のようにうつくしく輝きを放つものであればいい。
そのひとつに、わたしとの記憶もあったら、嬉しいな。
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、かつて自分を捨てた母・聖子がいた。他の同居人は、家事を完璧に担う彩子と、聖子を理想の「母」と呼び慕う恵真。
「普通」の家族関係を築けなかった者たちの奇妙な共同生活は、途中、うまくいきかけたものの、聖子の病で終わりを告げ――。
すれ違う母と娘の感動長篇。
〈解説〉夏目浩光
感想
町田そのこさんにハマってしまい、3冊目です笑
そしてこの本が3冊の中で一番好きです。
普通に読んでて泣きました。
主人公千鶴の元夫がDV男で金の無心までしてくる、身近にいたら「気違い」と言ってしまいそうな人なんですが…やっぱりこの世界にはこういう人が存在するんですよね。
この世界に存在するなんて信じたくないくらい酷い男です。
千鶴が元夫から逃げるために向かった母の所有する「さざめきハイツ」に住んでいるメンバーもまあ千鶴と同じくらい訳ありなかんじです。
今までは閉ざされた世界に生きていた千鶴が「さざめきハイツ」で出会う人たちの影響で変化していく様がすごく良いなあと読んでて思いました。
そしてこの「星を掬う」を含めた町田そのこさんの3冊の本を読んで、「理不尽な状況には何としても屈しちゃだめだ」ってことをもしかして言いたいのかなぁ、と感じたり。
「自分の人生は自分だけのもの」
という母・聖子の言葉がこの本には度々出てきて、一見「別にそんなのは普通のことじゃない?」って言葉なんだけど、最後まで読み進めていくとこの言葉の重みがね、すごいです。
幼少期に背負ってしまった部分って、なかなか乗り越えることが難しい気がするし、現実では小説のようにうまくいかないけれど、この本では千鶴と聖子の関係性の変化やお互いの心の変化がすごく丁寧に描かれていて、本を読んだ後、久しぶりにものすごい余韻に浸ることができた作品でした。
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